SPIEF「ブロックチェーンと暗号通貨技術:過去、現在、未来」
セッションのダイジェスト(2/3)
前回記事より、ロシアで開かれたサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで6日に行われたセッション「ブロックチェーンと暗号通貨技術:過去、現在、未来」のダイジェストを3部構成でご紹介しています。
今回の記事では規制、そしてビットコインがPoSに移行するかに関するブテリン氏の見解を見ていきましょう。
前回の記事では、分散型金融システムの実現可能性と、ブロックチェーンのユースケースに関する見解についてのお話をしておりますので、ご興味のある方はこちらからご覧ください。
マルティノフ氏「もう1つ言及したいトピックは世界的な規制です。将来的に、どのような規制が待ち受けているのでしょうか?そして規制当局とイノベーター間の連携は可能なのでしょうか?」
ブテリン氏「短期的には状況は変わらないでしょう。国によって規制当局は異なるアプローチを取っています。ICOやファンドレイジングをめぐる規制にも言及されています。昨日、米証券取引委員会(SEC)の大きな声明もありました。
業界と協力を試みる規制当局もあります。彼らは当局側の目標を達成する一方で、ブロックチェーンベースの分散型アプローチによって市民がメリットを享受できる方法を見出そうともしています。STOのコンセプトに多くの関心を持っている当局もあるようです。
台湾ではまもなく法制化されるでしょう。他にも検討している当局があるようです。また、STOはただの言葉に過ぎず、言葉の正確な定義は最終的に採択されるフレームワークに大きく左右され、法的管轄区域によって異なってくるでしょう。
もう1つは金融アプリケーションの取引所とプロバイダー全体に対する規制です。これまでの発表では取引所が主に規制される側でした。規制の種類としてKYCやAMLがある一方で、取引所からの盗難や出口詐欺に対処する消費者保護もあります。
ここでもこれまでと同様の状況が続くでしょう。地域によって取引所に課される要求や求められるトレードオフは異なり、より便利でユーザーをできるだけ阻害しない消費者保護が確立されようとしています。その中で数年以内に目にするだろうと私が考えている興味深いトレンドの1つはノンカストディアル取引所の可能性です。
完全分散型取引やノンカストディアル取引だけでなく、中央集権型オペレータ的なソリューションも含まれます。こうした事例としてStarkWareと0xが数日前にリリースしたパートナーシップ、StarkDEXがあります。これはスマートコントラクトとゼロ知識証明を使うことで、取引所を詐欺やハッキング被害から守ります。
規制当局よりやや広くなりますが、政府が数年以内によりフォーカスする対象は、様々な種類の公共サービスへのブロックチェーンアプリケーションの活用です。これは長年にわたり、とても抽象的に話されてきたことですが、まもなく開始するに違いないと私は考えています。
最近目にしたものとして、政府ではなく大学ですが、OpenCertsというアプリケーションがあります。これはイーサリアムブロックチェーンを使うことで、大学の学位のような証明書が保護、認証されます。
マルティノフ氏「ビットコインが1万ドル超えしたとき、膨大なエネルギー消費の必要性に直面しました。これは環境に優しくない上に、非効率です。もしPoSが公正なだけでなく、取引の検証において、より効率的でセキュアな方法だと証明されれば、多くのブロックチェーンがPoSに移るかもしれません。ビットコインがPoSに移行する可能性は?」
ブテリン氏「文化的な抵抗感があるため、ビットコインがすぐにPoSに移行する確率は非常に低いでしょう。ですが長期的に見れば、PoSを注視するプレッシャーは確実に存在しますし、これは考え方を変えうる。」
ビットコインなどは、初期はマイニング報酬が多く、どんどん下がっていくというインセンティブ設計を採っています。例えば現在の報酬は12.5BTCで、2040年ごろには発行上限に達します。そのためシステムはセキュリティを担保するため、将来的に報酬ではなく取引手数料に依存するよう切り替える必要が出て来るでしょう。問題は、取引手数料が比較的少ない点です。イーサリアムでも同じ構図です。これが十分か不十分かも不明瞭です。
選択肢は3つあると考えています。
1つは、2,100万枚の発行上限に達してからも発行を続けること。もう1つは、51%攻撃が起きるリスクを容認すること。第3の可能性が、PoSの導入です。完全なPoSでなくても、ハイブリッド型のPoSでも十分かもしれません。ですが、ある程度のPoSを加えることは必要でしょう。