SPIEF「ブロックチェーンと暗号通貨技術:過去、現在、未来」
セッションのダイジェスト(1/3)
ロシアで開かれたサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで6日、セッション「ブロックチェーンと暗号通貨技術:過去、現在、未来」が行われました。
イーサリアム財団のウラジスラフ・マルティノフ氏がモデレータを務め、パネリストとしてイーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏などが登壇しました。
このセッションのダイジェストを3部構成でご紹介していきます。今回の記事では分散型金融システムの実現可能性と、ブロックチェーンのユースケースに関するブテリン氏の見解に焦点を当てます。
マルティノフ氏「分散型経済とオープンファイナンスはどこへ向かい、世界的な分散型金融システムは本当に可能性があるのか?それとも、多くの人が言うようにユートピアの一種なのでしょうか?」
ブテリン氏「ブロックチェーンを用いた金融とオープンファイナンス、金融産業全体に何が起こるかを述べるのは時期尚早だと考えています。この盛り上がりを巡って期待は高く、金融への応用がこの10年、特に直近1年間で現れました。しかし規模に関しては、少数の環境でユーザーはとても少ない。ブロックチェーン技術は多くの面でまだポテンシャルを証明できておらず、時がたつにつれ改良されていく余地が大きいです。まだ解決されていないが数年以内には解決が見込まれるスケーラビリティ問題もあります。プライバシーやセキュリティ関連の問題もありますが、これも数年以内に解決できると見込んでいます。
しかし一般論として、1,000人に対してきちんと機能するシステムを構築するのと、より多い、メインストリーム層のオーディエンスに対して機能するシステムを構築するのでは大きな違いがあることは強調されるべきです。
私は解決策が見出されることを期待していますし、その解決策は、今私たちが見据えているような完全な分散型か、もしくは少なくともその中間の、ブロックチェーンを用いてある程度のローカルでの分散化と透明性、さらなるセキュリティを提供する解決策のどちらかであると期待しています。」
マルティノフ氏「今やタクシーを呼ぶため、多くの人がウーバー、ロシアではヤンデックス・タクシーを使います。5年前はこれほどタクシーの使い方が急変するとは考えられませんでした。ブロックチェーンのユースケースでは、ここ数年で国境を超えた匿名取引があります。質問ですが、その他に一般に受け入れられるであろう出現しつつあるユースケースはありますか?そして、新たなユースケースのような注視すべきものは具体的にありますか?」
ブテリン氏「国際送金は実際に仮想通貨をベースにした取引が機能している分野でしょう。
アフリカを訪れた際、私は現地の人々にブロックチェーンの活用方法について質問しました。彼らの答えは非常にシンプルです。そこでは多くの人々がリモートワークで先進国の企業で、あるいは自営として働いており、非常に簡単で効率的に金を移動させる手段として暗号通貨を使っています。それは契約や金融工学のような複雑な手続きや知識を必要としませんが、人々にバリューを提供する、実際に存在するものです。そのため特に短期的には、このようなものを目にする機会が増えていくのは間違いないでしょう。
長期的にはオープンファイナンス分野で、合成的なコントラクトを通じて様々な評価方法が開発されていくと考えています。これまで多くの実験が行われてきましたが、最近では資産担保などを通じた試みが行われています。
私は人々が使い始めているのを実際に目にしていますし、関心はどんどん高まっています。発展途上国の人々が初期ユーザーになるだろうと見ています。彼らは私たちの多くが持つ(銀行口座やクレジットカードのような)伝統的な金融ツールにアクセスできません。そして私の見解では、彼らはブロックチェーンや暗号通貨ベースのツールの便利さに気付くでしょう。これらはデジタルかつインターネットベースであるため、全世界どの国でも同じように機能するからです。これは大きな強みです。」